長谷川泰三著の命のカウンセリングを読んだので、もう一冊著作『車椅子が教えて
くれたありがとう』を読んだ感想です。
前作の命のカウンセリングは長谷川泰三さんの自伝だとしたら、こちらの本は
泰三さんのカウンセリングの風景、カウンセリングへの思い。
より心理学、カウンセリングにフォーカスした内容になっています。
神経痛とセラピー
泰三さんは、事故の後遺症で神経痛に悩まされていたそうです。死にたくなるほどの
壮絶な痛み。あまりの激痛に自殺しようとしたぐらいだそうです。
そんな痛みも心が悲鳴を上げていると出てくる。それを平さんがセラピーで癒して
くれます。小さな子供の頃の傷を癒し、カウンセリングによって痛みも心も癒される
様子は本当に?と思ってしまうほど不思議なものでした。
自分が死にたいと思ったことが何回もあるが故に、自殺しそうな人がわかる。
自分の辛い経験は、このためだったんだと思ったそうです。日本は自殺大国。
カウンセリングが欧米に比べて普及しておらず、気軽に受けることもできない
のが原因ではないか?と書かれていました。自殺は残された人がものすごい
罪悪感を背負う行為なんだと改めて気づかされました。
駆け出しカウンセラーの苦しい日々
神戸メンタルサービスに所属していた泰三さんですが、9年後独立することになります。
その時すでに売れっ子カウンセラーになっていた泰三さんですが、独立した途端
うまくいかず、経済的にも困窮したそうです。
経済的にも困窮し、食べるものにも困ってカウンセラーをやめ、生活保護を受けようと
していた矢先にまた、助けの手が差し伸べられるのです。
その後矢継ぎはやに依頼が相次ぎ、またカウンセラーとして再起するのですが、その
活動するところが北陸でした。自殺率が高く、気になっていたそうなんです。
その時定期的にグループセラピーをしていた方々に震災後再開したそうなんですが、
カウンセリングを受けていたおかげで心が落ち着けた、自殺しなくててすんだと。
カウンセリングの力はすごいんだなぁと思いました。
いろんなカウンセリングのエピソードを丁寧にえがいています。カウンセリングの
情景が目に浮かぶようで、カウンセラーの卵としてはとても参考になりました。
いろんなエピソードを読んで気がついたんですが、やっぱり親との関係や問題が、
その後の人生で問題の原因となっていることが多いです。家族との関係を深掘り
することが結局は、遠いようで癒しの近道なのかなと感じました。
でもちょっと怖いとも思います。わたしは子育て中なので、わたしが原因で息子に
将来問題が起こったりしないだろうかと心配になりました。家族が仲良くて、
愛されていても問題が起こってしまうのなら、どう子供を育てていけばいいんだろう
とちょっと頭を抱えてしまいました。
最終章は東北での事故からドラマ化
泰三さんは東北でバスが横転する事故にあったそうです。その時『まだ死にたくない』
と思い、人生の残された時間でできることは限られている。
そして本を書こうと思い立ったそうなのです。しかし前作の命のカウンセリングは
死をテーマにしたこともあってか、なかなか売れず。
ところが24時間テレビの原作になったことでベストセラーになり、多くの人が手にとって
くれることとなったそうなのです。ドラマ化がきっかけで泰三さんにたくさんの出会いや
喜びがあったのです。
わたしは前作を読んでこの人に会ってみたいなぁ。なんだかあたたかいオーラが文章
からも漂ってくると思いました。前作は助けて、と言えない苦しみがダイレクトに心に
響いて、わたしの気持ちも共鳴して涙が止まりませんでした。
ドラマ化とテレビ出演が2012年。そして2014年に48歳という若さで突然死去されました。
金沢での心理学講座開催中に、体調が急変そのまま逝去されたそうです。
もう会えないのか、残念だなぁと思うと同時に、根本裕幸師匠の師匠なんですよね。
そのマインドは根本師匠からお弟子に引き継がれ、そしてまたお弟子たちからいろんな人
に届くんだな、と思ったらなんとも言えない不思議な気持ちになりました。
正直にいうと前作の方がわたしは好きですが、今作はカウンセリングというものが
どういうものなのか。泰三さんがどんな人たちと向き合ってきたのかがわかる良作です。
気を引き締めて、心理学の勉強をしようと思わせてくれた本でした。
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